ふと、
あなたに寄り添って歩く私に気がつきました。
家の中でじっとしているにはあまりにも心地の良い天気だったので「少し外へ出ませんか?」と提案してみましたら、
あなたはいつものように笑って承諾して下さいました。
初夏が近づいている時期の少し眩しい日差しを浴びながら、
何気ない話や道端や民家の軒先に咲いている花など見ながら特に目的もなく2人で歩いて回ります。
「今日の御夕飯はどうしましょうか?」とか、
「もうあの花が咲く時期なんですね」とか。
目の前を横切っていった猫を見て、
あなたのご近所さんで猫好きの彼の御話をしましたら
「やめてくれぇ。噂をしたら何たらってぇ言いやすから、もしあのガキが来たらどうすんですかぁ」
なんて言われるものですから少し笑ってしまいました。
そうやって歩いていて、
気がついたんです。
着物のうえ女であるため小幅が小さい私に合わせて歩いて下さるあなたに。
私の話に微笑みながら答えて下さるあなたに。
そんなあなたの行動に、
幸せを感じる私に。
「ん? どうしやしたぁ、菊さん?」
「いいえ、少し噛みしめていまして……」
さて、
もう少し歩いて帰りましょう。
帰ったら甘いもの好きなあなたのために、
とびきり美味しいお菓子でも作りますね。
私に幸せを与えて下さる、
せめてものお返しに……。
いつの間にかの二人の距離
どうしても菊さんとサディクさんが並んでいるのを想像すると、
夫婦にしか見えないんですよね。