「耀さん、耀さん。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっと待ってるある」
「待ってください。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっとずっと待ってるある」
「待ってください。ずっとずっと待ってください」
待ってるあるよ。
ずっとずっとずっと、待ってるある………。
不毛なやり取りを続けている気がする。
それでも我と菊はこの追いかけっこを止めない。
我の決して菊から見えなくなるとこまでは行かない。
菊から見えるよう、
菊からもう少しで届きそうなところに必ず居る。
そして菊は必ず我に届きそうで届かないところまで走ってくる。
届きそうになったら足を止める。
そしてまた我を追いかけて動き出す。
それの繰り返し。
「耀さん、耀さん。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっと待ってるある」
「待ってください。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっとずっと待ってるある」
「待ってください。ずっとずっと待ってください」
途中で菊が転んだら、
菊が起き上がるまでじっとその場で待つ。
我が疲れたら、
我の息が整うまで菊はじっと我を見ている。
菊がお腹が減ったら、
菊が好きな我の作った饅頭を差し出してやる。
我が眠たくなったら、
我が起きるまで菊も側で眠る。
雨が降り出したら、
雨宿りできる場所を見つけてつかず離れずで雨が止むまで待っている。
そしてまた追いかけごっこを始める。
「耀さん、耀さん。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっと待ってるある」
「待ってください。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっとずっと待ってるある」
「待ってください。ずっとずっと待ってください」
途中で誰かが止めたが、
振り払った。
途中で誰かが嘲笑ったが、
無視した。
途中で誰かが泣いてたが、
知ったことではない。
途中で誰かがため息をついたが、
聞えないふりをした。
途中で誰かが不思議がったが、
逆にそれが我には不思議だった。
「耀さん、耀さん。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっと待ってるある」
「待ってください。待ってください」
「待ってるあるよ。ずっとずっと待ってるある」
「待ってください。ずっとずっと待ってください」
そうやってずっと追いかけごっこを続けている。
我と菊は、
そうやってずっとずっと追いかけごっこを続けていく。
永遠に。
ずっとずっとずっと………。
「二人ぼっちの鬼ごっこ」
そしていつの間にか、
本当に永遠になった……